2009年05月21日

納まり

一つ前の記事「職業病」でコメントくださったウタトマさんは整理収納アドバイザー仲間であり
彼女もインテリアコーディネーターでもあります。
気になる建物やインテリアをみつけると思わず触ったり覗き込むという
私の癖に「分かるわかる」と言ってくれた彼女も
ディスプレイされている商品よりその陳列されている棚の納まりが気になってしまうそうです。

この「納まり」というのは、端とか継ぎ目とか細部の処理のことで
建築の世界ではとても重視されています。
今まで付き合いのあった現場監督さんや職人さんもいかにきれいに納めるかに気をつかっていました。

ところがこれは世界共通ではないようなのです。
二年前にインテリアの勉強を兼ねて旅した北欧諸国では
この納まりに対してはびっくりするぐらい大胆。
全体として心地よい素敵な空間ができていれば細かいところは気にしてないみたい。
たとえばこんなホテルの部屋も
納まり

天井の電気配線は出ています(いくらリフォームした部屋とはいえ日本なら天井に埋め込みます)
納まり

世界的に有名な建築家・デザイナーのアアルトの自宅&アトリエは
コンパクトで機能的でとても心地よい空間なのですが
納まり納まり納まり

ドアの入口の枠もビス丸見え(写真の黒い点がそう」)。
日本ならビスの頭を見えなくする処理をするかもっと目立たないビスで打ちます。
納まり

巾木(床と壁の境目を隠す木)のつなぎ目も非常におおざっぱです
納まり

この大らかさに驚いて写真を撮りまくっていたら
「壁の隅で何とっているの?」と同じツアーの参加者から不思議がられました。
ちなみにこのツアーは北欧デザインを学ぶと銘打たれたツアーで
ウエブデザイナーやカメラマン、家具職人、ディスプレイ関係者などが参加していましたが
デザインのプロといってもジャンルが違うと関心はそれぞれなんです。

さて、帰国してその当時仕事をしてきた現場監督や職人さんたちに
この話をしたら日本ではそんなの通じないと一笑されてしまいました。

デザインは細部(ディテイル)に宿るのも事実です。
日本人の器用さは世界に類をみません。
アメリカホームステイ中子供に折り紙を教えたことありますが
みんな紙の端と端を合わせることができないのです。
細部にこだわる日本の美意識や仕事人の心意気は
素晴らしいと思います。

でも余りにも細かいところばかりにこだわり過ぎてもっとも大切な何かが
おいていかれているのでは…と思うことも時にはあります。
お客さんがこんなデザインにこしたいと言ってますと現場に伝えても
納まりが悪そうなデザインでは
「そんなみっともないことできるか」と
受け付けてもらえない。

それが雨漏りの恐れがあるとか重大な欠陥につながる場合に
できないと言うのはわかるけど、見た目の問題で、
しかもそれを当の客は気にしていないのだから…。
みっともないとは誰に対してなんだろう?
誰のために家づくりをしているのだろう?

そんな場面にもしばしば遭遇してきた私にとって
北欧の洗礼されたデザインと心地よい空間づくりと
その一方で納まりに対しては非常に大らかな様子は新鮮に映ったのでした。
そして偉大な建築家の家が公開されているだけでなく
中で自由に当時のままの書斎の机やソファーに座ったりできるのも
日本ではこういうことはないよなーと感動したのでした。
 納まり


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